2013年3月23日土曜日

「おおかみこどもの雨と雪」感想

細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」を見ました。

おおむね好印象です。

これは子どもの自立を受け入れれる母の物語なんだと思います。

この物語の特殊な点はもちろん「おおかみこども」という点ですよね。
マイノリティな存在ゆえに社会的なサポートをほとんど受けることができない主人公一家。
野の花を瓶に生け、免許書の写真を遺影代わりに使うような生活。
妊娠しても結局病院には一度も行かないわけです。

でもその秘密を守って生活するという点はこの物語の核ではないと思います。
都会のパートで周りから迫害を受ける描写がありますがそれほど深刻なレベルではないし、
工夫次第によっては解消できるような気がします。
主人公一家が田舎に移り住む理由も「人間か狼かを選べるように」といってますからね。

田舎の生活でも「おおかみこども」がばれるような危機には主眼が置かれていないように思えます。
草平少年に雪が「おおかみこども」であることがばれそうになる描写がありますがあそこらへんはカットしたほうがいいくらいに思えます。

「おおかみこども」という特殊性がもっとも顕著に表現されたのは、雨の「狼として山で生きていく」という決断だと思います。

雨がどんどん花のコントロール配下から離脱していき、ついには人間の生活を捨ててしまう。
それは通常の人間の通常の子離れ親離れと大きく異なります。
10歳の少年の決断ゆえに、それが正しいものなのか、それとも花はそれを制するべきだったのか判断に迷うようにも思えます。
しかし亡き父親の言葉と雨の姿勢がそれが正しいと告げているのです。

「狼として山で生きていく」という特殊な決断を受け入れる花の母親としての態度こそがこの物語の核なのだと思うのです。

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