2010年5月2日日曜日
【星4つ】秒速5センチメートル感想 新海誠作品
「秒速5センチメートル」は2007年に公開された新海誠監督のアニメーション映画です。
この映画は3話構成になっており、
一話目をwebで無料配信するという斬新なプロモーションを行っています。
新海監督はNHKのトップランナーという番組に出演したことがあります。
私はその番組を見て新海監督の人間性に大いに好感を持ちました。非常に理性的で誠実な人柄がうかがえました。
この物語には世界の危機も人の命にかかわるような大事件もおきません。ごくごく普通の平凡な出来事にフォーカスされています。こういう題材をきちんと作品として仕上げるというのは大変だと思います。作者自身の日常での観察の努力が求められるからです。
第一話「桜花抄」は主人公の貴樹が栃木に住む幼馴染の明里に 会いに行くという話です。貴樹は種子島に引っ越すことになっていて、 その前に明里に会っておきたかったのです。
その日は記録的な大雪に見舞われ、貴樹を乗せた電車は遅れに遅れます。
携帯のない時代なので、明里に連絡をすることもできず、焦燥感が貴樹を襲います。このあたりで感情移入できない人はおそらく人格に問題があると思います。
誰でも共感できるプロットです。
第二話「コスモナウト」は種子島の女子高生、花苗の視点で描かれます。
東京から引っ越してきた貴樹に一目ぼれをして、その想い告げようとします。しかし、貴樹の心には誰かがいることに気づき、その想いをそのまま封印するのでした。
第三話「秒速5センチメートル」は時間も短くほとんど台詞はありません。
山崎まさよしの名曲「One More Chance ,One More Change」に載せた、映像の断片で構成されます。
種子島と栃木という距離に引き裂かれた二人は文通などで連絡をとりますが、
だんだんと疎遠になっていきます。
社会人になった貴樹は明里への引きずったまま、満たされない日々をすごしています。3年付き合った女性にも一切心を開くことはありませんでした。 憔悴しきった貴樹はついに会社を辞めてしまいます。 それに対して、明里は結婚がきまりました。当然相手は貴樹ではありません。 そしてある踏み切りで二人はすれ違います。追い求めていた明里の面影を見つけた貴樹は振り返ります。「あれは明里なのか?」通過する電車の向こうを凝視する貴樹。電車が通り過ぎると、そこには。。。
誰もいません。
貴樹は吹っ切れたように前を向いて歩き出します。
この誰もいなかったときの無味乾燥な感じは結構グッとものがあります。
新海監督はこの作品で何を伝えたかったのでしょうか?
それは「会えないせつなさ」だと思います。
トップランナーで監督は想いを寄せる女性にメールをしても返事が来ない
つらい気持ちを表現したいと話していました。
監督のずるいところはここですね。
メールの返事がこないのは明らかに相手に気がないからです。
それを相思相愛なのに会えないつらさに美化しています。
そのため、「そんなに好きなのに、全力で追いかけなかったのか?」というようなもっともなつっこみが生まれてしまうのです。
花苗のエピソードや3年付き合った女性のエピソードは
「もてなかったわけじゃない。そこそこもてたけど、明里じゃないとダメなんだ。」というような言い訳がましい感じがしてなりません。
また、第一話で明里とあった後に、キスをして小屋で一夜を明かしたというくだりがあるのですが、
ここに非常に違和感を感じました。中一でキスはないんじゃないでしょうか?
それに、小屋なんかに泊まったら両親が心配して警察に連絡します。
また背景は美しいのですが、人物のラインは結構雑でした。
そういった細かい点でいくつか残念な部分がありますが、
全体的にはクオリティの高い作品だと思います。
過去の恋愛をいつまでも引きずるというのは男性に特有の性質らしいので、
女性の目にはこの作品がどう映るのか気になりますね。
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